戸愚呂弟を演じた綾野剛の肉体改造と精神の追い込み方は、常軌を逸していた。ただ筋肉を増量するのではない。暗黒武術会編で見せた「武道家としてのストイックさ」と「妖怪へと魂を売り渡した男の悲哀」を両立させるため、ミリ単位で身体のキレと所作を調整。トレードマークであるサングラスの奥に宿る虚無感、低く響く声音のトーンに至るまで、徹底的なキャラクター構築が行われた。
一方、兄役の滝藤賢一が見せたアプローチも凄まじい。弟の肩に乗り、変幻自在に身体を変形させる戸愚呂兄。滝藤は全身にトラッキングマーカーを装着し、特異な姿勢を維持しながら、卑劣で残忍な台詞回しを何パターンも繰り出した。肩の上という極めて狭小な空間を支配する怪演は、現場のスタッフを幾度も息呑ませたという。