高橋順子の人生を語る上で、作家・車谷長吉氏との関係は避けて通れません。ふたりが婚姻関係を結んだのは1993年、高橋氏が49歳のときでした。当時、車谷氏は「赤目四十八瀧心中未遂」などで知られる、身を削るような私小説で異彩を放っていた無頼派の作家です。
「世捨て人」を自称し、自罰的な生き方を選びがちだった車谷氏と、知性と包容力を備えた高橋氏の共同生活は、傍から見ればまさに波乱そのものでした。しかし、互いの文学的才能を誰よりも深く理解し合っていたふたりは、唯一無二の伴侶として寄り添い続けます。
彼女の詩作に漂う静かな強さは、命がけで言葉と格闘する夫と真正面から対峙し、その業を受け止めた経験から磨かれたものと言えます。