ブレイクの瞬間だけを切り取れば、彗星のごとく現れた実力派に見えるかもしれない。だが、霧島れいかのキャリアは極めて重層的だ。彼女の非凡さを映画通に知らしめた原点は、内田けんじ監督の傑作インディペンデント映画『運命じゃない人』にまで遡る。複雑に交錯する時間軸の中で、リアリティとミステリアスさを絶妙な塩梅で両立させたあのヒロイン像は、いま見返しても息を呑むほど新鮮だ。
さらにトラン・アン・ユン監督が村上春樹の金字塔を映画化した『ノルウェイの森』での熱演も見逃せない。繊細な精神の揺らぎを抱えたレイコ役を、透明感と痛みを帯びた眼差しで具現化。国内外の名匠たちがこぞって彼女に重要な役を託すのは、どんなに過酷な役柄であっても、人間味ある体温を吹き込める稀有な才能を信じているからに他ならない。