世界的な注目を集めるきっかけとなったのは、米紙の特集記事だった。作家で写真家のクレイグ・モッド氏が独自の視点で街の歩きやすさと歴史的景観の美しさを伝えたことで、ニューヨーク・タイムズ『行くべき52カ所』に山口市が選出された。この報道がもたらした衝撃は大きく、海外からの個人旅行者が旧市街のカフェや料理店にふらりと現れる光景が日常となった。
山口市観光協会の担当者は「ブームで終わらせず、訪れた人々が何度でも足を運びたくなる受け入れ態勢を整えてきた」と語る。京都を模して築かれた大内文化の町並みには、過剰な商業主義に染まらない凛とした空気が漂う。古い町家をリノベーションした空間で、地元産の無農薬野菜や地鶏を使った昼餉をいただく時間は、喧騒に疲れた現代人の感性を静かに揺さぶる。