宿の名に冠された「和」と「空」。それは日本人のアイデンティティを形作ってきた二大思想の結晶だ。十七条憲法の第一条に刻まれた聖徳太子の「以和為貴(和をもって貴しとなす)」に見られる、調和と寛容を重んじる精神。そして、般若心経(空思想)が説く、すべての事象は固定的な実体を持たず、相互に繋がり合って変化し続けるという深遠な哲理である。
滞在者は館内で催される「語り部」による歴史講話や、朝の静寂の中で行う坐禅・写経体験を通じて、この二つの哲学を理屈ではなく身体感覚として受け取っていく。執着を手放して心を「空」にし、他者や自然との「和」を取り戻す。それは情報過多に晒される現代人にとって、最も贅沢なデトックスに他ならない。