組織の性質の違いは、そこで働く職員の身分やキャリアパスの構造に顕著に現れる。国家公務員試験(総合職)を突破していわゆる「警察庁キャリア」として採用された幹部候補生と、各都道府県の採用試験を経て警察官となるノンキャリア・地元採用者との間には、明確な昇進ルートの差異が存在する。
警察庁に入庁したキャリア組は、採用直後から将来の幹部として育成される。彼らは国家公務員の身分を保持したまま、数年単位で各地の都道府県警察に出向し、若くして署長や県警本部長といった要職を経験する。最高到達点は警察庁長官、あるいは警視総監だ。昇進スピードは圧倒的であり、30代で大規模な組織の頭脳として指揮を執ることも珍しくない。
対して警視庁に直接採用された警察官の大半は地方公務員だ。交番勤務からスタートし、現場での実績や厳しい昇任試験を重ねて階級を上げていく。警務や捜査の最前線で長年培った知見は組織の骨格となるが、叩き上げのノンキャリアが到達できる階級には構造的な上限が存在する。霞が関の政策立案者たるキャリアと、現場を支える実務者。この二重構造が、警察行政の強固な統制力と現場の機動性を両立させる原理となっている。