メディア表現と漢字の読みをめぐる関係も無視できない。出版業界の校閲現場では昔から、「似非」という表記が登場した際には読者の誤読を防ぐためにルビを振るか、あるいは平仮名・カタカナ表記(「えせ」「エセ」)に開く処理が推奨されてきた。しかし近年、エンターテインメント作品での意図的な漢字使いが人々の意識に新たな波紋を広げている。
一例として、人気小説を原作としNetflixなどのグローバルプラットフォームで配信されたアニメや映画『偽物語』のムーブメントが挙げられる。作中では「本物」と「偽物(にせもの)」、そして「似非(えせ)」という概念の違いがキャラクターの対話を通して哲学的に掘り下げられた。視聴者の間で「偽と似非の境界線はどこにあるのか」「似非を『にせ』と読むのはなぜ誤りなのか」といった考察がネット上で活性化。サブカルチャーが視聴者の語彙に対する知的好奇心を刺激する好例となった。