丼ものの豪快さに目を奪われがちだが、握りの一貫を口に運んだとき、この店の技術的な底力があらためて浮き彫りになる。
人肌よりわずかに温かいシャリは、口に入れた瞬間にほどよく散り、主張しすぎない米酢の酸味が魚の脂を絶妙に受け止める。冷たすぎるネタが乗せられた安易な寿司とは根本から異なる、温度の調和がここにはある。
特に光り物への仕事が素晴らしい。しっかりと酢で締めつつも、身の芯には瑞々しさが残り、青魚特有の力強い旨味だけが際立つ。素材の良さに甘えることなく、一手間を加えることで魚のポテンシャルを最大化する。大衆的な店構えの奥に、本物の寿司職人としての矜持が静かに光っている。