原作となったのは、昭和後期にひっそりと出版された小さな児童文学だった。ページをめくれば素朴な挿絵が並ぶ短編が、いかにして世界規模のアニメーション映画へと変貌を遂げたのか。その鍵は、原作の持つダークな余白の大胆な拡張にある。
絵本のような可愛らしいビジュアルに油断した観客は、物語中盤で訪れる過酷な現実の描写に息を呑むことになる。干上がりかけた沼地で、仲間たちに見捨てられながらも鍵盤を叩き続ける主人公の姿。それは現代社会で孤立する人々の肖像そのものだ。子供向けの教育的な枠組みを潔く脱ぎ捨て、普遍的な人間の業を描ききった脚色が、作品に類稀な推進力を与えている。