日本のスコアラー史を語る上で欠かせない巨人が、故・野村克也氏だ。1990年代、ヤクルトスワローズを率いて一世を風靡した「ID野球(Import Data野球)」は、スコアラーの地位を球界内で劇的に引き上げた。データをただの数字で終わらせず、選手の意識改革と戦術の軸へと昇華させた功績は計り知れない。
その系譜を受け継ぎ、現場の観察眼で伝説を築いたのが元読売ジャイアンツのチーフスコアラー・三井康浩氏だ。2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)において、日本代表のチーフスコアラーを務めた同氏は、対戦国の配球傾向や打者の狙い球を神がかり的な精度で的中させ、世界一奪還の立役者となった。
三井氏をはじめとする名スコアラーたちに共通するのは、データシートの奥にある「人間の感情」を読む力だ。追い込まれた投手が思わず逃げたくなるコース、ピンチで打者が力む瞬間の呼吸。単なる統計値を超えた人間観察の深さこそが、名将たちから全幅の信頼を勝ち取ってきた。