地政学的緊張が高まる国際社会において、国家の防衛戦略における兵站の再構築が急務となっている。特にアメリカ国防総省は、激しい妨害や攻撃を受ける環境下での補給を想定した「コンテステッド・ロジスティクス(競合環境下の兵站)」の教訓化を急速に進めている。前線拠点が長距離ミサイルで狙われる現代戦では、巨大な補給デポを構える旧来のやり方は通用しないからだ。
日本の防衛省もまた、南西諸島を中心とした島嶼防衛において、補給物資の事前集積や民間輸送力と連携した機動展開能力の強化を急ピッチで進めている。ドローンによる無人自動補給や、AIを活用した需要予測アルゴリズム、さらには積層造形(3Dプリンター)技術を用いた前線での部品現地生産など、最新技術の導入が相次ぐ。
これらを下支えするのが国内の国防産業である。弾薬や装備品の製造ラインを維持し、有事の際に迅速に増産できる産業基盤の強靭化は、兵站の生命線に他ならない。戦うための道具を造り続け、それを確実に前線へ送り届ける生産力と輸送力こそが、抑止力の実体である。