医療現場を取材すると、患者の口から最も多く聞かれる言葉が「転んだ覚えも尻もちをついた覚えもないのに、なぜ折れているのか」という困惑です。
ネット上の情報や一般的な先入観では「骨折=階段からの転落や激しい転倒による事故」と刷り込まれています。しかし、骨密度が低下した高齢者の骨は、言わば「乾燥したヘチマ」や「密度の粗いウエハース」のような状態です。外部からの激しい外傷がなくとも、日常のわずかな負荷で簡単に微小骨折を起こします。
当事者の生の声や臨床現場の聞き取り調査からは、以下のようなありふれたシチュエーションで骨折が生じている事実が浮き彫りになっています。
- 実例1(70代女性):「ベランダで重い洗濯物カゴを持ち上げた瞬間、背中に軽いピキッとした違和感があった。ギックリ腰だと思い湿布を貼って1ヶ月放置していたら、レントゲンで胸椎が2箇所潰れていた」
- 実例2(60代女性):「風邪をひいて激しくくしゃみをした数日後から、寝返りを打つのが辛くなった。整形外科を受診したところ、第1腰椎の圧迫骨折と判明した」
- 実例3(80代男性):「庭の草むしりで前かがみの姿勢を数時間続けたあと、腰が伸びなくなった。単なる筋肉痛だと思っていたら骨粗鬆症が進んでいた」
このように、激痛を伴わないまま「気づかないうちに折れて潰れ、そのまま歪んだ状態で固まってしまう」ことが最大の盲点です。レントゲン撮影を行って初めて過去の骨折痕が複数見つかり、本人も家族も愕然とするケースは日常茶飯事となっています。