土師孝也の真骨頂は、静かな冷徹さだけではない。アニメ『真救世主伝説 北斗の拳』シリーズや関連作品で演じた「拳王」ことラオウ役では、世界を力でねじ伏せる絶対的覇者の恐ろしさと、その裏に秘めた悲哀を声で見事に体現してみせた。
ラオウというキャラクターは、力による支配を目論む暴君でありながら、己の信念と愛を貫く不屈の男でもある。土師の発する腹の底から響く怒号と、静かに問いただす低音の落差は、聴く者の身体を震わせるほどのプレッシャーを与える。「我が生涯に一片の悔いなし!」というあまりにも有名な叫びにおいても、力任せの大声ではなく、魂の深層から溢れ出るような圧倒的カタルシスを込めた。
先代声優である内海賢二が確立した重厚なラオウ像を尊重しつつも、土師独自の人間的な奥行きを加えたアプローチは、新旧ファン双方から高い評価を獲得している。