夜驚症が起こるメカニズムは、睡眠の構造そのものに深く関わっている。人間の睡眠は、脳を休めるノンレム睡眠と、体を休めて夢を見るレム睡眠が交互に訪れる周期で成り立っている。問題が発生するのは、夜の最初の数時間に訪れる最も深いノンレム睡眠(ステージ3および4)からの切り替えのタイミングだ。
通常であれば、深い眠りからスムーズに浅い眠りへと移行する。しかし発達途上の子どもの脳では、中枢神経系が未成熟なために、運動系や感情を司る扁桃体だけが突如として覚醒状態に入ってしまう。一方で、理性を保ち状況を理解する前頭前野は深い眠りにとどまったままだ。つまり、脳の一部だけが目覚め、残りが眠り続けている半覚醒の異常事態が発生しているのである。
この時、子どもは強烈な恐怖感や闘争・逃走反応を全身で表現するが、理性的な意識は存在しない。本人が周囲の状況を認識できていないのは、この不完全な覚醒状態が原因だ。