日本の広告史において、コンドームという商材が「隠すべきもの」から「世界に誇るクリエイティブ」へと決定的な転換を果たした瞬間がある。相模ゴム工業株式会社が展開した伝説的なキャンペーン「LOVE DISTANCE」だ。東京と福岡という遠距離恋愛中の男女が、互いに向かって1か月間走り続け、ついに抱き合うまでの軌跡を追った長編ドキュメンタリー風の演出は、カンヌ国際広告祭で金賞を受賞する快挙を成し遂げた。
この作品が画期的だったのは、商品そのものや避妊という行為を前面に押し出すのではなく、「ふたりの距離を縮める」という純粋なエモーションを物語の中心に据えた点にある。避妊具というデリケートなプロダクトを、人と人との心理的・身体的な親密さを祝福するアイコンへと昇華させた試みは、国内外のマーケターに強烈なパラダイムシフトを迫った。