日本国内で上位蜃気楼の聖地として世界的に知られているのが、富山県東部に位置する富山湾である。春先に立山連峰から雪解け水が流れ込む富山湾では、海面付近に冷たい空気の層が作られる。そこへ南からの暖かい風が吹き込むことで、上下の温度差が10度以上に達する絶妙な大気構造が完成する。気象データの観測を続ける気象庁の地域気象観測システム(アメダス)や、海域のリアルタイム観測ネットワークは、風向が南寄りの微風であり、晴天で放射冷却が効いた翌日の日中に発生率が跳ね上がることを裏付けている。
この地に立つ魚津埋没林博物館は、長年にわたり蜃気楼の学術的調査と観測データの蓄積を続けてきた専門機関だ。館内に設置された高性能カメラと高解像度気象センサー群は、微細な大気のゆらぎや温度境界線の変化をミリ秒単位で捉える。2026年の最新解析によれば、海面から高度数十メートルにかけて形成される「逆転層」の厚みと傾きが、見え方の明瞭さを左右する決定打であることが突き止められている。