総務省消防庁が公表する救急搬送データによると、急病による搬送事由の中で「心疾患等」および「呼吸器系」の占める割合は常に上位に位置しており、初期段階で胸の違和感を自覚していた患者が少なくありません。しかし、現場の医療従事者からは「ただの筋肉痛だと思い湿布を貼って数日間様子を見ていた」「息苦しいのを疲れのせいにして我慢していた」という受診遅れの事例が後を絶たないと報告されています。
医療機関の臨床アンケートやSNSコミュニティでの体験談を分析すると、患者が直面したリアルな実態が浮かび上がります。
「深呼吸するたびに左胸がピキッと痛み、最初は長時間のパソコン作業による肩こりや神経痛を疑っていた。しかし2日経っても痛みが引かず、階段を上るだけで息が切れるため呼吸器内科へ駆け込んだところ、左肺が半分近く虚脱した気胸と診断され即日入院となった」(20代・会社員男性の手記より)
「息を深く吸うと胸の奥がズキズキと痛み、なんとなく背中も重い感覚があった。市販の鎮痛薬を飲んで出勤を続けたが、次第に冷汗と強い締め付け感に襲われ救急搬送。早期の急性心膜炎と判明し、医師から『もう少し遅れたら重篤な心不全に移行していた』と告げられた」(40代・教職女性の証言より)
患者の多くは「激痛で倒れるような状態」を想像しているため、初期のチクチク感や深呼吸時だけの違和感を軽視してしまう心理的バイアス(正常性バイアス)に陥りがちです。痛みの強弱にかかわらず、症状が持続したり悪化傾向にある場合は客観的な検査が必要です。