この問題の根底において、決して忘れてはならないのは被害者遺族の存在である。事件から29年が経過した今もなお、失われた命が戻ってくることはない。毎年巡ってくる命日や、ネット上で定期的に騒ぎ立てられる加害者の噂を目にするたび、遺族は理不尽な精神的苦痛を強いられ続けている。
ネットユーザーによる加害者追跡は、一見すると「正義感」や「警戒心」の名のもとに行われているように見える。だが、その実態が単なる野次馬根性や収益目的のコンテンツ消費に成り下がっているとすれば、それは死者と遺族に対する二重の尊厳の蹂躙でしかない。私たちが問われているのは、過去の惨劇をどのように記憶し、野放しのデジタル私刑とどのように対峙すべきかという、メディア社会全体の倫理観そのものなのだ。 (出典: 東 慎一郎 西岡 真 現在(Yahoo!ニュース))
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