神谷氏の代表作である神馬は、折り紙界におけるひとつの金字塔だ。しかし、軽い気持ちで折り始めると中盤の入り組んだ行程で確実に迷子になる。特に最大の難所となるのが、背中から大きく広がる巨大な翼の折り出し部分だ。ここを成功させる秘訣は、序盤の段階でいかに寸分の狂いもなくグリッド(仕込み線)を正確につけられるかにかかっている。数ミリのズレが後半で大きな歪みとなって現れるため、指先だけでなく定規やヘラを駆使するプロの裏技が欠かせない。
折り図の解読にも独特のコツが存在する。『神谷哲史折り紙作品集』を読み解く際、矢印の方向だけを追うと失敗しやすい。立体化する直前の「沈め折り(シンク)」や、紙を複雑に押し込む場面では、前後の行程の立体図を照らし合わせることが不可欠だ。平面の図面を頭の中で立体的に組み立てるトレーニングを行うことで、迷路のような難関ルートも一筋の光が見えてくる。