神戸連続児童殺傷事件に関する本は『絶歌』だけではありません。事件の全体像や少年犯罪の更生の実態を知る上で、極めて対照的なアプローチをとっているのが元法務省矯正局幹部などの取材に基づく『少年A 矯正2500日』などの客観的ノンフィクションです。
『少年A 矯正2500日』では、元少年Aが収容された関東医療少年院における専門医や教官たちの壮絶な治療教育プログラムが克明に描かれています。解離の傾向や歪んだ認知をどのように修正し、自らの犯した罪の重さと向き合わせようとしたのか、法務・医療関係者の苦闘が客観的な記録として残されています。
本人の主観と自己演出に満ちた『絶歌』と、第三者の専門家視点で書かれた検証本を読み比べることで、元少年Aの「更生」がいかに脆く、内省の言葉がいかに自己防衛的な側面を孕んでいたかが浮き彫りになります。加害者本人の語る言葉の危うさを客観視するためにも、複数の記録を冷静に対比する視座が欠かせません。