食品の期限表示には「賞味期限」と「消費期限」の2種類が存在します。農林水産省および消費者庁のガイドラインにおいて、賞味期限は「美味しく食べられる期限(品質保持期限)」であり、消費期限は「安全に食べられなくなる期限(使用期限)」と明確に区別されています。
日本卵業協会の基準によると、鶏卵に印字されている賞味期限は「安心して生食できる期間」として算出されています。この設定は、食中毒の原因となる「サルモネラ・エンテリティディス(SE菌)」が卵の内部で増殖しない期間を基準に、極めて安全側に倒して計算されています。
食品安全委員会のデータによると、サルモネラ菌の増殖速度は温度に大きく左右されます。家庭用冷蔵庫(10℃以下)で適切に保管されている場合、菌の増殖は極めて緩やかになります。理論上の生食可能日数は、夏場(平均気温28℃想定)で約16日間、春・秋(約23℃)で約25日間、冬場(約10℃)では約57日間と算出されており、パックに表示されている賞味期限(通常は産卵後14日〜21日程度)を過ぎても、卵自体の抗菌バリアが維持されている期間内であれば加熱して食べる余地が残されているのです。
卵の白身には「リゾチーム」と呼ばれる強力な溶菌酵素が含まれており、外部から侵入しようとする雑菌の細胞壁を破壊して内部を守る自然の防御システムが備わっています。この天然のバリア機能こそが、賞味期限を過ぎても卵がすぐに腐敗しない決定的な理由です。