テレビ界のトップランナーとして君臨していた2000年春、上岡さんは突如として芸能界からの完全引退を発表しました。当時、芸能界やメディアでは「病気説」や「政界進出説」など様々な憶測が飛び交いましたが、引退理由の真相は極めて明快なものでした。
上岡さんは若手時代から公然と「芸人は50代で辞めるのが一番美しい」「21世紀には仕事をしない」と宣言していました。公約通り、58歳を迎えた2000年4月にすべてのレギュラー番組を降板。以後、2026年に亡くなるまでの23年間、テレビやラジオなどの公の場に一度たりとも復帰することはありませんでした。この徹底した自己規律こそが、上岡龍太郎という表現者の最大の美学です。
その血筋と美意識は、長男である映画監督の小林聖太郎氏にしっかりと受け継がれています。映画『マエストロ!』や『破門 ふたりのヤクビョーガミ』などを手掛け、日本映画界で確かな評価を築く聖太郎監督。上岡さんの訃報に際して発表された「引退して20年以上経ちますが、最後まで上岡龍太郎のまま逝きました」というコメントは、父親の貫いた美学への深い敬意として多くのファンの胸を打ちました。