エッセイストや研究家として知られる以前、彼女は卓越した画力と構成力を持つ漫画家として出版・漫画業界を席巻していた。1980年に鮮烈なデビューを飾り、浮世絵の筆致を取り入れた独特の描線と、行間を読ませる静謐なコマ割りで独自の表現領域を切り拓いた。
その頂点の一つが、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した傑作『合葬』である。幕末の動乱期、彰義隊に加わった若者たちの短くも切ない青春と散り際を描いた本作は、漫画というメディアの枠を超えた文学的到達点として絶賛された。しかし彼女は30代半ばで「漫画家としてのエネルギーを使い果たした」とあっさり引退を宣言する。名声に執着せず、描くべきものを描き切ったら潔く筆を置く姿は、業界関係者に強烈な印象を刻み込んだ。