現在の山谷エリアを歩くと、まず目に入るのは電動車椅子で行き交う高齢者と、大きなバックパックやキャリーケースを引く外国人観光客の姿です。かつて早朝から求職者が溢れかえっていた路上手配師の姿や立ち並ぶ露店は姿を消し、静穏な住宅地としての顔が定着しました。
台東区や福祉関係団体の調査データによると、旧山谷地域(台東区清川・日本堤・荒川区南千住の一部)に存在する簡易宿泊所(通称:ドヤ)の利用者の約8割から9割が、生活保護を受給する単身高齢者となっています。かつて寝泊まりするだけの場所だった3畳一間の空間は、現在では介護ヘルパーや訪問看護ステーションと連携した「終の棲家(ついのすみか)」としての機能を果たしています。
その一方で、2002年の日韓ワールドカップや2010年代以降のインバウンド急増を契機に、多くの簡易宿泊所が外国人バックパッカーや低予算旅行者向けの簡易ホテルへと改装されました。都心部や浅草、上野へのアクセスの良さと、1泊あたり3,000円〜5,000円前後という圧倒的なコストパフォーマンスが評価され、国際色豊かな安宿街としての地位を確立しています。