インターネットの掲示板やSNSでは、「外回りは外側の線路を走るのだから、内回りよりも走る距離が長くて移動に時間がかかるのではないか」という議論が定期的に浮上します。この噂の真偽について、線路工学とダイヤグラムの観点から検証します。
結論から言うと、幾何学的な走行距離は外回りの方がわずかに長いものの、実際の所要時間には一切影響しません。
複線の線路間隔(軌道中心間隔)は約3.8メートルです。半径約5.5kmの円として単純計算すると、外回りの線路は内回りに比べて1周あたり約24メートル長くなります。しかし、34.5kmという全周距離に対してわずか数十メートルの差であり、速度換算すればコンマ数秒の誤差に過ぎません。
山手線の所要時間を左右している主たる要因は線路長ではなく、「駅での停車時間(客扱時間)」と「先行列車との間隔」です。朝ラッシュ時の池袋駅や新宿駅など、乗降客が極めて多い駅ではドアの開閉時間が長引くため、走行距離の差とは無関係に運行所要時間は変動します。JR東日本の公式列車ダイヤ上も、平時における1周所要時間は内外ともに約59分〜65分で同一に設定されており、「外回りだから遅い」という言説は明確な誤解です。