なぜニットの袖は、まくるだけで簡単に伸びてしまうのでしょうか。その理由は、ニット特有の編み構造(リブ編みなど)の伸縮限界にあります。ニット生地は糸がループ状に連続して絡み合っているため横方向の伸縮性に優れていますが、太い前腕や肘のあたりまで無理に引っ張り上げると、繊維本来の復元力を超える負荷がかかります。
特にウールやカシミヤなどの天然繊維は、水分や摩擦、引っ張る力によって繊維のスケール(毛羽)が絡み合い、元の形状に戻りにくくなる性質を持っています。その結果、袖口のゴム編み部分が緩んで保持力を失い、動くたびに袖が滑り落ちてくる悪循環に陥るのです。
さらに、袖口が広がったまま放置すると、手元がもたついて清潔感を損なうだけでなく、だらしない印象を周囲に与えてしまいます。お気に入りの一着を長く美しく着続けるためには、力任せにたくし上げる行為を今すぐ見直す必要があります。