この広大な邸宅は、単なる私生活の場にとどまらない。日本の政治・行政の動向を左右する重密談の場として、長年機能してきた。
永田町の政局が動く節目において、自由民主党の幹部や閣僚、時には他党の要人が、人目を避けるように夜な夜なこの松濤の地に集う。国会内の応接室や料亭とは異なり、記者の目を潜り抜けた極秘談判が行われる「奥の院」として、数々の歴史的決定がこの邸宅の中で下されてきた。
政権交代の裏工作、党総裁選の票読み、あるいは重要法案の調整に至るまで、日本の近代政治史の裏側には、常にこの松濤邸での会合が存在していたと言える。