起源をたどれば、日本神話における天孫降臨の場面に行き着く。天照大神が地上を治めるべき孫のニニギノミコトに鏡・剣・勾玉を授け、「この鏡を我が御霊として拝せよ」と命じた神託がすべての始まりとされる。古代において神と同殿で暮らしていた歴代天皇は、崇神天皇の御代に至り、その神威の強大さを畏怖して鏡と剣の形代を作り、本体を宮外の清らかな地へ遷宮させた。
この古代の誓約は、元号が改まる大礼の儀式でも寸分違わず再現された。今上天皇が即位された際、国事行為として執り行われた「剣璽等承継の儀」が記憶に新しい。黒塗りの箱に収められた草薙剣の形代と八尺瓊勾玉、そして国璽・御璽が静寂の中で新天皇の御前へと運ばれたあの数分間の儀仗は、神話と現代が直結している瞬間を世界に知らしめた。
古代信仰と国家統合の儀礼が融合した神道の精神世界において、神器は単なる美術品や骨董品ではない。国家の安寧と道徳的責任を背負う資格そのものが、物質を介して継承されるという形而上の装置なのである。