インターネット上や愛猫家のコミュニティで長年語り継がれているのが、「オスの三毛猫には2000万円から3000万円の懸賞金・取引価格がついた」という言説です。このセンセーショナルな噂の背景には、確かな歴史的事実と時代背景による誇張が交錯しています。
事の真実を辿ると、昭和の高度経済成長期からバブル期にかけて、一部の熱狂的な富裕層愛好家やコレクターの間で「幻の縁起物」として法外なプライスが提示された逸話が発端とされています。また、当時のテレビ番組やバラエティ特番のオークション企画において、希少価値を強調する演出として「2000万円相当の価値がある」と取り上げられたことが、現在まで語り継がれる決定打となりました。
歴史的な実例として最も高名なのが、1956年の第1次南極地域観測隊に同行したオスの三毛猫「タケシ」です。「船に乗せると遭難しない」という船乗りたちの古くからの信仰に基づき、過酷な南極観測船「宗谷」の航海安全と隊員たちの癒やしのために寄贈されたタケシは、極寒の昭和基地で越冬を果たし、国民的な英雄となりました。
しかし、2026年現在のペット市場において、オスの三毛猫が数千万円で取引されることは実質的にあり得ません。動物愛護管理法の厳格化、遺伝的異常を抱える生体の商業利用に対する規制、そして繁殖不可能な個体であるという現実から、正規のペットショップやブリーダーが法外な価格で販売することはありません。現在見つかるオスの三毛猫のほとんどは、一般家庭での自然出産や保護猫シェルターからの譲渡によって大切に家族として迎えられています。