日本国内の販売台数だけを見て企業の生死を占うのは、グローバル製造業の分析において致命的な視野狭窄です。三菱自動車が倒産しない決定的な構造的強みは、以下の3点に集約されます。
一つ目は、東南アジア(ASEAN)市場における絶大なブランド力と市場占有率です。タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどの新興国において、三菱のピックアップトラック『トライトン』やクロスオーバーMPV『エクスパンダー』は、日本の『ヤリス』や『N-BOX』に匹敵する国民車としての地位を確立しています。悪路走破性と耐久性が命綱となる地域において、三菱ブランドへの信頼は絶大であり、毎年安定して巨額の営業キャッシュフローを叩き出しています。
二つ目は、電動化時代におけるPHEV(プラグインハイブリッド)技術の先行者利益です。『アウトランダーPHEV』に代表されるツインモーター4WDと車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」は、世界中の自動車評論家から極めて高い評価を受けています。完全な電気自動車(BEV)への急速なシフトが一服し、現実的な最適解としてハイブリッドやPHEVが見直されている現在の世界市場において、三菱の独自技術は強い競争優位を保っています。
三つ目は、「三菱グループの総力」と「日産・ルノーアライアンス」という二重のセーフティネットです。三菱自動車は、三菱重工業、三菱商事、三菱UFJ銀行を中心とする「三菱金曜会」の有力メンバー企業です。仮に未曾有の事態が生じたとしても、グループの看板を守るための資本支援や取引先ネットワークが機能する構造にあります。さらに、日産・ルノーとの共同購買・共通プラットフォーム活用により、開発コストを劇的に圧縮しています。