リュウグウノツカイが海岸に漂着したり網にかかったりすると、必ずと言っていいほど「大地震の前触れではないか」という噂がネット上を駆け巡ります。古くから「豊漁の使者」や「地震の前兆」とする言い伝えが存在してきたのは事実です。
しかし、東海大学海洋研究所などの研究チームによる膨大なデータ解析により、深海魚の出現と大規模地震の発生には統計学的な相関関係が認められないことが科学的に証明されています。
深海魚が浅瀬に迷い込んだり漂着したりする真の要因は、主に以下の海洋物理学的なメカニズムによるものです。
冬から春先にかけての季節風や寒波により、表層の水温が急激に低下する現象(冷水塊の発生)が起こります。変温動物である深海魚は急激な水温低下に適応できず、運動能力が著しく低下して浮上してしまいます。さらに、沿岸湧昇(深層の水が表層へ押し上げられる現象)や強風による高波に巻き込まれることで、自力で深海へ戻れなくなった衰弱個体が波打ち際へと打ち上げられるのです。
地震の予兆というオカルト的な不安に惑わされることなく、海洋環境の物理的変動がもたらした自然現象として冷静に受け止める姿勢が大切です。