パドキア共和国デントラ地区にそびえる標高3,722メートルの霊峰ククルーマウンテン。その広大な敷地を取り囲む最初の物理的防壁が、ゾルディック家の犬として君臨する番犬ミケです。
敷地の正門である「試しの門(黄泉の扉)」を自力で押し開けず、横のくぐり戸から侵入した者は、例外なくミケの餌食となります。試しの門 扉の番人 ゼブロの証言によれば、ミケは「10年前に下された命令」を寸分の狂いもなく遂行し続けており、家族以外の命令には一切耳を貸しません。
クジラ島で育ち、あらゆる野生生物の感情を敏感に察知してきたゴンが、ミケと対峙した瞬間に見せた動揺は尋常ではありませんでした。ゴンを戦慄させた最大の理由は、ミケの目に「怒り」も「警戒」も「飢え」も宿っていなかった点にあります。
通常の猛獣であれば、テリトリー侵犯に対する怒りや獲物を狙う獰猛な感情が存在します。しかしミケの瞳は完全に冷徹で、まるで計算通りに動く機械そのもの。言葉や感情を通じたコミュニケーションが1ミリも成立しない「プログラムされた絶対的断絶」を直感したからこそ、ゴンは底知れぬ恐怖を抱いたのです。