1963年にバーモントカレーが誕生するまで、日本のカレーは基本的に大人のための辛い食べ物だった。小さな子どもがいる家庭では、親とは別に別の料理を作るか、辛いルーをお湯で薄めて食べさせるしかなかった時代だ。
「家族全員が同じ鍋から笑顔で食べられるカレーを作りたい」。その強い思いから、スパイスの刺激を抑えつつコクと甘みを生み出す試行錯誤が始まった。だが、単に砂糖を加えてもベタつくだけで、カレー本来の旨味は引き立たない。
そこで白羽の矢が立ったのが、当時流行していたバーモント健康法の組み合わせだった。すりおろした完熟リンゴの爽やかな酸味とハチミツの上品な甘みが、幾重にも重なるスパイスと奇跡的な調和を生み出した瞬間だった。