調剤薬局の服薬指導現場や皮膚科外来の症例報告において、患者が最も失敗しやすいポイントが「塗布する身体の部位による感受性の差」です。
薬学的な経皮吸収データによると、前腕内側の薬物吸収率を「1.0」とした場合、顔面(頬・額)は3.0〜4.0倍、陰部・デリケートゾーンは実に42倍もの吸収率を示します。角層の厚さが部位ごとに大きく異なるため、同一の薬剤であっても塗る場所によって生体への影響力は何倍にも跳ね上がります。
顔やデリケートゾーンへの塗り分けにおいては、基剤選びと薬効強度のコントロールが不可欠です。
顔面は皮脂腺が密集している一方で角層が薄く、クリーム基剤の過剰な油分や界面活性剤が毛穴を塞ぎ、ステロイド誘発性の酒さ様皮膚炎や毛嚢炎(ニキビ)を誘発するリスクがあります。そのため、顔面には吸収性の良いローションや、比較的軽めの親水軟膏が短期間のみ処方される傾向にあります。
一方、外陰部や肛門周囲などのデリケートゾーンは、角層が極度に薄いだけでなく、常に衣服で密閉され摩擦と湿気に晒されています。この部位に刺激性のあるクリームやアルコール含有ローションを塗布すると、激烈なしみる痛みを誘発します。臨床現場の看護師や薬剤師からは、「デリケートゾーンのかゆみ止めに清涼感のある市販クリームを塗り、悶絶するような痛みで駆け込んでくる患者が後を絶たない」という証言が多数報告されています。粘膜に近いデリケートゾーンには、保護作用が高く刺激ゼロの油脂性軟膏を選択するのが鉄則です。