乳児が呼吸をしていない、あるいは顔色が土気色で反応がない場合、救急車の到着(全国平均約9分〜10分)を待っていては脳の不可逆的損傷や心停止を回避できません。発見者がその場で行う「乳児の心肺蘇生法(CPR)」が生死を分けます。
日本救急医療財団およびJRC蘇生ガイドラインに基づく乳児(1歳未満)への手順は以下の通りです。
ステップ1:反応の確認と刺激
赤ちゃんの足の裏を強めに指で弾く、あるいは肩を優しく叩きながら大声で名前を呼びます。身体を前後に激しく揺さぶる行為は、乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)による重篤な脳出血を招くため絶対に避けてください。
ステップ2:通報と応援要請(119番のスピーカー化)
反応がない場合、即座に大声で周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を依頼します。1人しかいない場合は、スマートフォンのスピーカー通話機能をオンにして119番へ発信し、通信指令員の指示を耳で聞きながら両手で直ちに救命処置に入ります。
ステップ3:呼吸の確認(10秒以内)
胸とお腹が上下に動いているかを目視で確認します。「普段通りの呼吸」をしていない場合、あるいは不規則にあえぐような呼吸(死戦期呼吸)が見られる場合は、直ちに心肺蘇生を開始します。
ステップ4:胸骨圧迫(心臓マッサージ)
固い平らな場所に赤ちゃんを寝かせ、左右の乳首を結ぶ線の少し足側(胸骨の下半分)に、指2本(中指と薬指)を垂直に当てます。胸の厚さの約3分の1(乳児では約4cm)が沈む強さで、1分間に100〜120回のテンポ(童謡「アンパンマンのマーチ」程度のリズム)で絶え間なく圧迫します。
ステップ5:人工呼吸(口対口鼻人工呼吸)と組み合わせ
乳児の場合、呼吸停止が先行して心停止に至る「低酸素性心停止」が圧倒的に多いため、人工呼吸の重要性が極めて高くなります。片手で赤ちゃんの頭を軽く支えて気道を確保し、救助者の口で赤ちゃんの「口と鼻の両方」を同時に覆い、胸が軽く上がる程度の息を約1秒かけて2回吹き込みます。
基本サイクルは「胸骨圧迫30回:人工呼吸2回」です。万が一、人工呼吸に抵抗がある場合や技術的に困難な場合でも、決して手を止めず胸骨圧迫だけを休まず継続してください。