現場指導において頻繁に比較されるのが「オーバーラップ」と「アンダーカット」です。どちらもビード止端部に発生する代表的な形状欠陥ですが、その幾何学的形状と力学的性質は正反対の性質を持っています。
アンダーカット違いを端的に言えば、アンダーカットは母材がアークによって掘り起こされたまま溶加材で埋まらずに「溝」として残る現象(過大入熱・高速溶接・アーク長過長が主因)です。これに対し、オーバーラップは溶加材が母材の上に余分に「乗っかっている」状態です。
一見すると「母材が削れていない分、オーバーラップの方が母材厚さを減らしていないため安全ではないか」と誤解されがちです。しかし、溶接強度への影響という観点では極めて危険です。オーバーラップの止端部は極めて鋭利な不連続ノッチ(切れ込み)を形成するため、構造物に引張荷重や繰り返し荷重が加わった際、その隙間に凄まじい応力集中が発生します。ここが起点となって疲労亀裂(クラック)が母材深部へと急速に進展し、設計耐力を大幅に下回る荷重で脆性破壊に至るリスクを抱えています。