多作で知られる津村記久子さんの著作の中から、読書初心者から熱心な文芸ファンまで自信を持っておすすめできる傑作をランキング形式で紹介します。
1位:『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
18歳と8歳の姉妹が、親元を離れてとある田舎町で自立の道を歩み始める40年間の物語です。水車小屋にいる言葉を話す鳥・ヨウムの「ネネ」と町の人々に見守られながら、誰かの親切を受け取り、また別の誰かへ手渡していく連鎖が温かな筆致で描かれます。本屋大賞第2位に輝き、「読後感の良さは近年の日本文学で屈指」と絶賛された圧倒的最高傑作です。
2位:『ポトスライムの舟』(文春文庫)
第140回芥川賞受賞作。契約社員として工場で働きながら、体調不良や経済的な不安を抱えて暮らす29歳の女性・ナガセの日々を描いた中編です。年収や将来への漠然とした焦燥感、友人のカフェ開業計画などを背景に、「生きるための最低限の足場」を模索する姿が等身大のリアリティで迫ります。津村文学の原点を知る上で外せない一冊です。
3位:『この世にやすい仕事はない』(新潮文庫)
燃え尽き症候群で前職を辞めた主人公が、職業紹介所で紹介される一風変わった仕事に次々と就いていく連作短編集です。「見張り」「バスのアナウンス」「ポスター貼り」など、一見簡単そうに見える業務の裏側に潜む不思議な人間模様がユーモラスに描かれます。芸術選奨新人賞を受賞し、働くことの意味を軽やかに捉え直す名作として広く愛されています。
4位:『君は永遠にそいつらより若い』(ちくま文庫)
第21回太宰治賞を受賞した鮮烈なデビュー作(受賞時タイトル『マンボウズ・ア・ゴーゴー』)。卒業を控えた大学生のホリガイと、過去に深い傷を負ったイノギの交流を軸に、若者たちが抱える暴力性や孤独、生きづらさを鋭利な筆致で切り取っています。日常の奥底に潜む暗がりを凝視しつつ、ラストに差すかすかな光が強い印象を残します。
5位:『ディス・イズ・ザ・デイ』(朝日文庫)
架空のサッカー2部リーグ(2部相当)の最終節を舞台に、全国各地のサポーターたちの人間模様を切り取った連作短編集です。昇格や残留がかかった特別な一日を通じて、日頃の悩みや事情を抱えながらもスタジアムへ足を運ぶ名もなきファンたちの姿を活写。サッカーファンのみならず、何かに熱中した経験のある人なら胸が熱くなる秀作です。