この構図において最も冷徹なリアリズムが宿っているのが、橋の上のロシアの配置です。なぜ彼は二人の釣り人と肩を並べて竿を出さず、高い場所から見下ろしているのでしょうか。ここには日清戦争の風刺画におけるロシアの意図が如実に反映されています。
当時、ロシア帝国が国家戦略の最優先課題として掲げていたのが、年間を通じて凍らない港を極東に確保する「南下政策」でした。ウラジオストクを獲得していたものの、冬期には結氷してしまうため、さらに南の満州や朝鮮半島沿岸への進出を常に狙っていました。
ビゴーは、日本と清が狭い水域で争い、疲弊しきった瞬間を見計らい、力ずくで魚を横取りしようとする巨大帝国の野心を「橋の上からの視線」という形で表現しました。ことわざにある「漁夫の利」を地で行く構図であり、現場で泥臭く争う二者を手間をかけずに丸呑みしようとする強者の狡猾さを描いたものです。