深夜2時や3時といった丑三つ時であっても、店先に十数人の列ができる光景は一由そばの日常です。終電を逃した会社員、夜間シフトを終えたエッセンシャルワーカー、長距離を走るタクシードライバー、さらには遠方から車を走らせてやってくる熱狂的な愛好家まで、深夜の混雑状況は昼時とは異なる独特の熱気に包まれています。
人々を深夜のカウンターへと駆り立てる最大の主役が、名物の「ジャンボゲソ天」です。丼の縁からはみ出さんばかりの威容を誇るこのかき揚げには、大ぶりにカットされたイカの下足がこれでもかと詰め込まれています。衣のザクザクとした香ばしさと、噛み締めるほどに旨味が滲み出るゲソの強い弾力。この豪快な食感を受け止めるのが、東京下町の歴史を背負ったかのような漆黒のつゆです。
見た目の黒さに反して塩辛さは突出しておらず、鰹節の力強い出汁としっかりとした甘みが調和したコク深い仕上がり。ヘビーな天ぷらの油がつゆに溶け出すことで、時間とともにスープの円やかさと旨味が加速していきます。さらに、並打ちの蕎麦に加えて選べる「太打ちそば」を合わせれば、ワシワシとした強靭なコシが濃厚なスープと真っ向からぶつかり合い、深夜の空腹を圧倒的な多幸感で満たしてくれるのです。