一歩足を踏み入れると、誰もが異国のような違和感、いや、奇跡的な美しさに息をのむ。電柱が一本も存在しないのだ。1960年代の分譲開始当初からすべてのインフラを地下に埋設した計画都市。それがこの場所の骨格である。
景観を守る仕組みは徹底している。建物の高さは8メートル以下、平屋か2階建てのみ。敷地面積は最低でも170坪以上を求められ、境界線からのセットバックや緑化率も厳密に管理される。敷地を小さく割って売却することは絶対に許されない。商用利用も厳禁だ。看板一枚すら立てられないこの掟こそが、半世紀にわたり街の品格を支えてきた。
「普通の高級住宅街なら、時代の変化とともに規約が緩み、ペンシルビルや多層階のマンションが建ってしまう。しかしここは違う」。不動産アナリストのひとりは語る。「ルールを守ること自体が、最大のステータスであり資産価値なのだ」。