胴体着陸を行う際、操縦士が滑走路に向けて直ちに機首を向けることはありません。着陸の衝撃と摩擦による二次災害を極限まで減らすため、厳格な航空機緊急着陸手順(SOP)が実行されます。
その中でも極めて重要なのが「空中での燃料消費および燃料投棄(フューエル・ダンピング)」です。大型旅客機には翼から燃料を空中に霧状散布する投棄装置が装備されており(中小型機の場合は上空旋回による燃料消費)、着陸限界重量以下まで機体を軽くすると同時に、タンク内の残油を最小限まで減らします。これには明確な2つの理由があります。
第1に、機体重量を軽くすることで接地速度を下げ、着陸時の衝撃エネルギーを最小化すること。第2に、胴体着陸時の最大の脅威である「摩擦熱による航空燃料への引火・大火災」を防止することです。
上空で燃料を減らしている間、地上では消防隊が滑走路脇に集結し、化学消防車が待機します。かつては滑走路全面に泡消火剤を散布する「フォーム・パス」が行われることもありましたが、制動距離が伸びるリスクや現代の機体素材の特性から、現在は着陸直後の集中放水体制を整える運用が国際的な主流となっています。客室では客室乗務員(CA)が乗客に対し、衝撃防止姿勢(ブレースポジション)の指導、ハイヒールや眼鏡などの突起物の取り外し、脱出経路の再確認を徹底させます。