結論から申し上げますと、日本国内に公式な「北朝鮮大使館」は実在しません。日本政府は朝鮮民主主義人民共和国を国家として正式承認しておらず、国交が存在しないためです。しかし、東京都千代田区富士見に所在する「在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)中央本部」が、長年にわたり事実上の大使館(代表機関)としての役割を担い続けてきました。
朝鮮総連は法的には民法上の「権利能力なき社団(民間団体)」という位置付けです。一般的な外国大使館のようなウィーン条約に基づく「治外法権」や外交特権は一切認められていません。警察権や司法権の行使を免除される不可侵権が存在しないため、日本の捜査当局による家宅捜索や法的手続きが通常通り適用されます。
それにもかかわらず、なぜ事実上の大使館と呼ばれるのでしょうか。公安関係者や日朝外交筋の証言によると、朝鮮総連中央本部は本国最高指導部からの直接の指示系統を持ち、在日朝鮮人コミュニティの管理だけでなく、日本国内の政治家・言論人・自治体との連絡窓口、さらには事実上の領事・外交連絡機能を代行してきた経緯があるためです。かつて同ビルが競売にかけられた際、本国政府が強く反発したことからも、平壌側がこの拠点をいかに外交的生命線として重視しているかが裏付けられています。