映画表現の極北を走り続ける鬼才、黒沢清監督。その不穏で美しい映像美は、配信プラットフォームという自由なキャンバスを得て新たな次元へと進化を遂げている。冷ややかな緊張感が全編を覆うサスペンス映画において、計算し尽くされた音響効果と光と影のコントラストは、観客の脳裏に消し去りがましい不安を刻み込む。
「尺の制限や興行の枠組にとらわれない配信映画だからこそ、より尖った心理描写に挑める」。関係者が明かすところによれば、黒沢監督はセットの照明一つ、登場人物の微細な視線の揺れにまで狂気とも言えるこだわりを注いだという。画面の奥から忍び寄る影に、観客は息を飲むしかない。