一般的な鬼ごっこは、逃げる者全員がターゲットとなり、足の速い子どもが圧倒的に有利になる構造を持ちます。しかし、「ことろことろ」の構図は根本から異なります。一般社団法人鬼ごっこ協会の資料や伝承記録によると、その起源は平安時代、あるいはそれ以前の奈良時代(約1300年前)にまで遡るとされています。
古くは文献上で「子野子野」や「ことろ」と記され、室町時代の絵巻物や江戸時代の風俗画、狂言の台詞などにもその姿が頻繁に登場します。名だたる絵師たちが子どもの日常を描く題材として選ぶほど、民衆の生活に深く溶け込んでいた遊戯でした。
単なる俊足比べではなく、先頭に立つ「親」が両手を広げて「鬼」をブロックし、背後に繋がる「子」の最後尾を守るというドラマ性。この三者関係は、日本人が古来より大切にしてきた「共同体で弱者を守る」という社会倫理が、遊戯という形で昇華された稀有な文化遺産です。