地理の試験やクイズ番組で多くの人が混乱するのが、「日本一長い川」と「日本一大きい川」の混同です。信濃川が長さ(流路延長)日本一であるのに対し、利根川は流域面積(降った雨が集まる面積)日本一という決定的な構造の違いがあります。
利根川の流域面積は16,840㎢に達し、日本全体の国土面積の約4.5%を占めています。これは関東平野の大部分(群馬・栃木・茨城・埼玉・東京・千葉の1都5県)を網羅する巨大な集水システムです。一方、信濃川の流域面積は11,900㎢で全国3位にとどまります。この逆転現象が生まれた背景には、日本列島の地殻変動と、江戸時代に行われた大規模な治水土木事業が深く関係しています。
もともと利根川は、東京湾(当時の江戸湾)に注ぎ込む流路をとっていました。しかし、江戸幕府を開いた徳川家康とその技術者集団(関東郡代・伊奈忠次ら)は、度重なる江戸の水害を防ぎ、東北地方からの水上輸送路を確保するため、流路を東へ曲げて銚子(太平洋)へ流す「利根川東遷事業(とうせんじぎょう)」を約60年の歳月をかけて成し遂げました。この壮大な人工改修によって周囲の支流が合流し、現在の圧倒的な流域面積が完成したのです。
対する信濃川は、細長い山間盆地を縫うように抜けて越後平野へと抜ける細長い流路構造を持っています。横への広がりよりも縦への距離が卓越しているため、「長さの信濃川」「広さの利根川」という対比が成立しました。