「日本最南端の島」という言葉が指し示す場所が文脈によって異なる最大の理由は、「領土としての最南端」と「一般人が到達可能な有人島としての最南端」が完全に乖離している点にあります。
日本国が公式に領有権を宣言し、国際法上も管理している最南端の地点は、北緯20度25分31秒に位置する沖ノ鳥島(東京都小笠原村)です。国土交通省や海上保安庁の管轄下にあり、日本の排他的経済水域(EEZ)の起点として極めて重要な役割を担っています。しかし、沖ノ鳥島は一般交通機関が存在せず、民間人の立ち入りも厳しく制限されているため、観光客が足を踏み入れることは現実的に不可能です。
一方、私たちが自らの足で訪れ、宿泊や観光ができる最果ての地が、北緯24度03分に位置する波照間島です。波照間島は日本最南端の有人島として住民が日々の営みを続けており、観光客向けに「日本最南端之碑」や各種の到達記念品が整備されています。つまり、地理学・法学上の厳密な端を指すのか、旅人が目指せる現実のフロンティアを指すのかという前提の違いが、ネット上で交わされる噂や混同の正体です。
ここで、基礎知識として押さえておきたいのが日本の東西南北の端の全体像です。日本列島を取り巻く四極は、それぞれ以下のように定義されています。
- 最北端:択捉島カモイワッカ岬(北方領土・実効支配面では北海道稚内市の宗谷岬や弁天島)
- 最東端:南鳥島(東京都小笠原村・自衛隊や気象庁関係者のみ駐在する無人島)
- 最西端:与那国島トゥイシ(沖縄県八重山郡与那国町・一般人が到達可能な有人島)
- 最南端:沖ノ鳥島(東京都小笠原村・施錠管理された無人島)/波照間島(民間人が行ける最南端の有人島)
このように東西南北を見渡しても、南と東の端は一般人が容易に立ち入れない特殊な離島となっており、波照間島が旅人の憧れを集める象徴的な舞台となるのは必然といえます。