春になると、同一地域のソメイヨシノは何百本、何千本と植えられていても、まるで示し合わせたかのように数日間のうちに一斉開花を迎えます。この現象こそ、遺伝子情報が完全に一致しているクローンならではの挙動です。
桜の花芽は前年の夏に形成され、秋から冬にかけて休眠に入ります。一定期間の冬の低温にさらされることで休眠から目覚める「休眠打破(きゅうみんだは)」が起き、その後の春先の積算気温が一定水準(一般的に400度〜600度の法則)に達した瞬間に開花スイッチが入ります。
個体ごとに遺伝的なばらつきがある天然のヤマザクラの場合、木によって開花日が1週間以上ずれるのが自然界の常ですが、ソメイヨシノは全樹木が同一の環境応答遺伝子を持っています。そのため、同じ地域の同じ気象条件に晒された樹木群は、ミクロな狂いもなく同時に開花し、満開を迎え、一斉に散っていくという劇的なスペクタクルを生み出します。