酒田ラーメンの器を前にしてまず驚かされるのは、丼の底まで見通せそうなほど美しく澄んだスープです。その味の根幹を支えているのが、日本海沿岸特有の素材であるトビウオの焼き干し(アゴ出汁)と上質な煮干し、昆布などの魚介乾物です。豚骨や鶏ガラといった動物系スープも合わせられますが、決して脂っこく濁らせることなく、弱火でじっくりと旨味だけを抽出します。ひと口すすると、上品でありながら重層的な出汁の香りが鼻腔を抜け、最後の一滴まで飲み干したくなる深い余韻を残します。
そしてもう一つの大きな特徴が、市内店舗の自家製麺率が80%以上という驚異的な手仕事へのこだわりです。庄内の清らかな水を使い、季節や湿度に合わせて加水率を細かく調整しながら丹念に熟成されます。熟練の手揉みによって生み出される中細のちぢれ麺は、つるりとした滑らかな喉越しと、しっかりとしたコシを兼備。あっさりとしたスープをたっぷりと絡め取り、噛むほどに豊かな小麦の風味が広がります。