宇部興産専用道路の象徴と言えるのが、公道では絶対に見ることができない「ダブルストレーラー(フルトレーラー連結車両)」の存在です。国内の道路法下における車両制限令では、一般公道を走る大型トラックの総重量は原則25トン(特例でも最大36トン)に厳しく制限されています。しかし、完全私有地であるこの専用道路にはその規制が一切及びません。
現在運用されている車両は、トラクターヘッドに2台のトレーラーを牽引させた特注仕様で、全長は30メートル超、車両総重量は約120トン(積載重量は約88トン)に達します。1台で通常の大型ダンプカー約10台分のセメント中間原料(クリンカー)や石灰石を一度に大量輸送する計算です。この圧倒的なスケールメリットこそが、かつて鉄道輸送(国鉄美祢線・宇部線)や公道輸送に依存していた物流を自社専用道路へ全面転換させた最大の経済的動機でした。
車両の歴史を振り返ると、かつてはアメリカの砂漠や原野を走るヘビーデューティトラックの雄「ケンワース(Kenworth)」や「マック(Mack)」が本場から輸入され、武骨なボンネットスタイルで轟音を響かせていました。当時のドライバー手記や社内史によると、アメリカ車ならではの圧倒的なパワーと耐久性は初期の過酷な大量ピストン輸送を支えた功労者と語り継がれています。時代の変遷とともに、いすゞ・ギガや三菱ふそう・スーパーグレート、スカニアなどをベースに極限まで足回りと制動力を補強した特注国産ヘッドへとシフトし、現在も進化を続けています。