医療現場において、長い間「心臓が止まり血液循環が途絶えた瞬間に意識は消失する」と考えられてきました。しかし、蘇生科学の最新研究がその常識を覆しています。米ミシガン大学やニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部をはじめとする研究チームの大規模調査により、心肺停止状態に陥った患者の脳波から、極めて明瞭かつ組織化された電気信号が記録されたのです。
特に注目を集めているのが、記憶の想起や高度な意識的知覚に関わる「ガンマ波」のバースト現象です。酸素供給が断たれた直後、脳は活動を停止するどころか、一時的に異常なほどの過活動状態に突入します。心停止から蘇生した患者の約2割が「自分の蘇生処置を天井から見ていた」「医師たちの会話を正確に記憶していた」と証言する背景には、心停止後の意識が数分間にわたって一定レベルで保持されている生理学的裏付けが存在します。
この「最後の閃光」とも呼ぶべき電気活動は、脳が不可逆的な細胞死を迎える前に、蓄積されたすべての神経回路を総動員して環境に適応しようとする生物学的反応ではないかと推測されています。生命が尽きる間際、脳内では私たちが想像する以上に鮮明でダイナミックな体験が繰り広げられているのです。